すじこの毎日インドア

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『犯人に告ぐ』上巻は下巻への余興

 

こんにちは!すじこです。

 

犯人に告ぐ雫井脩介

・連続男児殺害事件を劇場型犯罪ならぬ劇場型捜査で犯人を探し出す

・主人公は誘拐事件の捜査に失敗し、記者会見でキレてしまった巻島史彦

 

 

雫井脩介さんの『火の粉』が凄く面白かったので、こちらも期待して買ったのですがメインの劇場型捜査は上巻の八割がた過ぎたところから始まります。上巻のほとんどは連続男児殺害事件の前に起こった別件の誘拐事件について。この時に起こる様々なことがのちに活きて来るんですよね。登場人物にも厚みが出ます。

 

 

上巻では主人公、巻島史彦の記者会見を読んで色々と気付かされました。

最近よく警察や国会議員などの記者会見を見るけど彼らも一人の人間。悪いことをしたのならそれなりの罰を受けなければいけないけど、テレビの前で見てるだけの私たちに怒る権利はあっても責める権利はあるのか?

 

確かに警察は失態を犯した。もし犯人を捕まえていられたら、誘拐された男の子は殺されずに済んだかもしれない。綺麗事かもしれないけど、手柄欲しさに東京と神奈川で揉めるのも間違っている。

 

でも一番の悪者は犯人であって、責められるのは巻島ではなく犯人なのである。

巻島の揚げ足を取り、完全に悪者に仕立て上げようとしてるマスコミ。他人の殺された子供より、出産を終えて生死を彷徨っている娘の方が心配という巻島に対して猛抗議。

そんなマスコミに対して巻島が放った「君だって記事を書き終えれば何もかも忘れて、どこかでご機嫌に一杯飲るんだろ⁉︎」にシビれましたね。正義ヅラしてる人たちも、みんながみんなそういう訳じゃないけど責めることが楽しくてやってるんだよね。向こうが逆らえないことをいいことに。

世間の声は大事だし、意見することは悪いことじゃない。だけ責める相手を間違ってはいけない。難しいけどね。

 

 

こんな重〜い感じで進んでいき、終盤に出てくる植草の過去の恋愛話。途中でこれって恋愛小説だったっけ?と錯覚(笑)

この植草が下巻で良いスパイスになるんですよね。というかもう私の中で植草がメインでした。

 

そしてついに劇場型捜査であるテレビ出演を果たす。初出演は大成功。

ここで思ったのだけれど、共演者の韮沢や早津達は6年前にプッツン騒動を起こした巻島だと気づかないのか?マスコミから巻島という男は何者だという問い合わせもあったらしい。おいおい。

本作では書かれていないけど、6年前のプッツン騒動はさぞかしワイドショーを騒がせたと思うんだよ。巻島という名前は忘れても、あれこの人どこかで……?ってならないのかな。

あれだけ騒いでたマスコミでさえ気づかない。やっぱり事件の当事者でない限り、どんだけ腹を立てようが責めようが忘れちゃうもんなんだな。

まさに巻島が言った「君だって記事を書き終えれば何もかも忘れて、どこかでご機嫌に一杯飲るんだろ⁉︎」が的中しましたね。

 

 

さて、次は『犯人に告ぐ』下巻について書きます。ここまで読んでくださりありがとうございました!